劇場版 MOZU 考察

Photo by Sunyu Kim on Unsplash

【MOZU】「劇場版 MOZU」予告編

目的地を間違えるな

なんで今更2015年の作品を見直して見たのか。

2020年について言及もしていたシーンがある。

気になった場面だけ虫食い状に考察。

評価は星四つ ★★★★☆

基本的なメタファーに沿った表現。

ロケ地はマニラ。

世界の渾沌さをフィリピンのスラム街の空気で現す。

『どうせ無茶なやり方をする気だろ?アンタ』

劇場版 MOZU

倉木と大杉のモクモク(喫煙)タイムでの荒れた線路は
倉木のやり方を現している。

水蒸気の靄(もや)、遠くが見通せない。

それでも見えない未来を突き進む、自灯明。

倉木の煙草に大杉が火を付けてあげるシーンはこの映画の中で一番セクシーな場面だと思う。

主人公が浴室で激情に駆られ息を乱したり、高柳に煽られて、慟哭する悲痛なシーン。


暗闇で叫ぶのは未だ示されない真相に至れてないから。


逆に最後のヘリポートでは怒りによって真相が明るみになるため。

自身が放った業火に照らされて叫んでいる。

セリフだけでなく息づかいや、動きで演技をする西島さんはえらい。

凄い。痛々しいアクションがリアリズムを出してていい。

エレナを探す中でヒューマントラフィック(人身売買)に一言だけ触れると共に麻薬を映像のみで映してた所。

撮影の小技だけど、実際に行われていることを抽出している。

閉鎖的な暗い空間は倉木自身の心。

トラック内の拷問シーン。

『もう終わりか?俺はお前があげた様な声はまだあげてないぞ』

劇場版 MOZU

これは未だ倉木が自身を責めてるメタファー。

ダルマに遭う前だからやはり叫ぶことはない。

狂気を味方につけろ

そこへ東のジープが体当たり。

実はこの時点で既に世界のフェーズが変わっている。

体当たり前から『新世界』の第4楽章が流れている。

ダルマの支配する世界から次の世界(倉木が流れの中心)に変わる流れ。

狂気(東)が倉木を起こしに来る。

暗い場所を無理矢理引き剥がし、ギラついた太陽光で覚まさせる。天岩戸を開ける。

東が電子端末(狂気)を倉木に渡す。

『お前はそれを捨てられない』

劇場版 MOZU

言い換えれば『ダルマを倒すなら狂気さを捨てるな。それが必要だから』

『もっと傷ついて欲しいが死ぬなよ、倉木。チャオ!』

劇場版 MOZU

東はもう一人の倉木。彼の中にいる狂気を表している。

キャラクターが唐突に現れたり、軽く書かれているのはそのせい。

無茶なやり方と狂気さが合わさり、倉木はダルマの元へ向かうことができた。

コピーはオリジナルに勝てない

大杉は単身、めぐみの救助へ向かう。

権藤はやはり強い。強いのに彼は致命的なミスをしている。

新谷宏美と言う他人になろうとしてしまった。

そこを東に見抜かれている。

オリジナルを殺して自分がオリジナルになろうとしたこと。

聖書にある通り、ルシファーは神に同じ存在は二つはいらないと堕とされる。権藤はそうなる道をそのまま進んでしまった。

新谷はアサシンであると共にスカウトの能力も持っている。

大杉の波紋、形跡を追って”弟のコピー”権藤を追ってきた。

どんなにそっくりになってもオリジナルはコピーを超えられない。

ましてやそのオリジナルは生きている。

名前の通り新谷に串刺しにされた権藤。

コピーじゃなくてオリジナルを極めようと言うシンプルなことをアサシンは身を持って教えてくれた。

新谷はMOZUにおいて狂言まわし。

私たちが見るべきはこの映画のエンターテイメントを楽しむと同時に、自らの目的地を再確認するためでもある。

どうして船の爆発でダルマを倒せなかった?

倉木の冷めた瞳は起死回生を思いつき、船に火をつけた。

それでも帰国した後にダルマは生きている。

これは倉木が怒りを発露させてないから。いくらガソリンの爆発が大きくても、彼は気持ちをこの時点では発露できていない。

それ故帰国した後もはじめと変わらない生活をしている。

心が変わらない限り、現実はループし続ける。

言葉の大切さ

明星との雨の中の再会シーン。

どしゃ降りは明星の悲しさそのものを現している。

倉木が暴走したら殺せと家族を人質に取られた明星。

『そんなことはさせない』

劇場版 MOZU

そう、この言葉が大事なのだ。

主人公が止めると言ったら止まるのだ。

それは倉木がすごいからではなくて、実際に言葉で発するからその意味が具現化されていく。

以下個人的なダルマについての考察。

夢で世論コントロールを刷り込んだとしても、夢で刷り込めただけ。

夢の世界で成就された悪夢は現実世界では具現化できない。

悪夢は寧ろ悪因を昇華した証し。

東との協力

倉木「システム?」「お前は奴らに何をされた?」

「お前も、お前は何を失った。いや、何を奪われたんだ」

東「悪夢も慣れれば最高の快楽に変わる」

倉木「強がるな」「お前は恐れてるだけだ。良心を取り戻すのを」

東「違う。無秩序で混沌とした世界を、永遠に続くような

混乱を、この目で見て見たいんだよ、俺は。」

倉木「別人になりすますことでお前は痛みから逃れてる。

本当のお前は、意識の奥で眠ってるんだろ」

劇場版 MOZU

映画館はメタ表現。

「この映画はフィクションですよ」

だから倉木は館内で煙草に火を付けられる。

「もうすぐ終わり(の時間)だからこのフィクションを終わらせましょう」

東だけではダルマを討てない。彼が歯車だからではなく

主人公は倉木だから、彼がこの話に乗っかる必要がある。

去り際にダルマのイメージが現れる。

けれどフィルムが焼けて無くなる。

文字通り、ダルマの死を暗示している。

この映画の主人公が舞台の主役。

倉木は終わらせることを選んだ。

故に高柳は倉木がダルマのいるヘリポートに唐突に現れる事態に驚く。

倉木がこの中で唯一物語を動かせられる。

高柳が2020年に歯車たちを一斉に発動させて事態を動かすと言った。コロナウィルスのことだろうか。

ヘリポートを囲む業火

感情を出さないと真相に辿り着けない

「俺の娘のことについて話せ」

劇場版 MOZU

待ち伏せしていた倉木は高柳へ吐き捨てると、ヘリポートの淵へライターを投げ入れて火を付ける。

いうまでもなくヘリポートを囲む業火は倉木の怒りを表現している。

今までは真相が出ないうちは気持ちを倉木の内部に秘めたままだったが、自らの怒りを炎に託して感情を発露させるきっかけを作った。それが高柳に娘の真相を話させることに繋がる。

隙をつかれてナイフを刺された倉木。

高柳に腹を踏まれて叫ぶのは痛いからより、悔しさや怒りをようやく声に出せてる状態。

ダルマに翻弄される男から自身の激情を中心に撮られている。倉木がやっと物語を動かす中心になれたという演出。

彼の気持ちがフィルム、私達の見る画面に直接投影できた。

事件後、吉田コマオは登録不明のヘリ、遺体3体と既に死人すらの扱いもない。誰かが不明の扱いにした。

よってはじめから吉田は『いなかった』存在になっている。

彼もまた歯車の一つだった。その軸は倉木が見つけるはず。

『もう、お前が夢に現れることはない』

劇場版 MOZU

これが全てだよね。倉木の物語だから。

彼が終わりだって言ったらそうなるんだよ。

たどり着く場所

東「これからこの国はバランスを崩し、混乱を招くだろう。もうこの国の人々はカオスに陥るしか無いんだよ」

倉木「俺はそうは思わない。お前の望みは叶わない。残念だがな」

東「どうしてそう思うんだ」

倉木「言っただろう?俺はたどり着く場所を間違えたりはしない。他の人間と同じように」

劇場版 MOZU

真実を回収したから

裸足の東と話すシーン。私的にはヘリから脱出して足を乾かしてたなごりと見てる。

倉木が普通に立ってるのを見ると数日たった後に見えるけど、ここの時間軸に正しさを求める必要はない気がする。

「行き着く先を間違えたりはしない」これは東に言ってる気がしない。

「他の人間と同じように」は観客に向けられた言葉だ。

俺が特別じゃないんだよ。皆が行くべき場所に行けるよ。

大杉と明星の席に遅れる倉木。マイペースにバーから出る。

クリスマス前の悲劇からようやく真実を回収できた。

だから同じ場所で話が終わり、電話を出る彼はここから新しい場所にいける。

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